手足に力が入らない!ギランバレー症候群の原因と症状や治療法
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ギランバレー症候群とは?
ギランバレー症候群とは急性炎症性の神経疾患のひとつです。フランス人医師のジョルジュ・ギランとジャン・アレクサンドル・バレーによって1916年に発見されました。10万人あたり年間1〜2人が発症する特定疾患に認定され、日本でも指定難病とされています。病気を起こすメカニズムは未だ完全には解明できていません。
年齢層問わず急に発症しますが、若年成人と高齢者に多く、60歳前後が最も発症の割合が多い疾患です。性別では男性に比較的多い傾向があります。
急に発症する神経炎のひとつで、主に筋肉を動かす末梢神経である運動神経が傷害されて、四肢に力が入らなくなったり、腱反射が消失したりします。重症の場合は中枢神経が障害されて生命維持に必要な機能が上手く働かなくなります。呼吸系の中枢神経が障害されて呼吸不全になり、一時的に気管切開や人工呼吸器による呼吸管理が行われることもあります。ニュースなどで多くの芸能人や有名人も発症していると報じられた病気です。
ギランバレー症候群の原因とは?
ギランバレー症候群は多くの末梢神経が障害される病気です。末梢神経には2つの種類があります。
有髄神経
軸索という神経の電気信号を伝える部分が髄鞘という鞘で覆われているもの
無髄神経
軸索が髄鞘で覆われていないもの
ギランバレー症候群は、有髄神経の軸索が剥がれる脱髄や、中心部分の軸索が障害されることが原因とされています。このような神経の障害を引き起こす原因は次のようなものです。
感染症
サイトメガロウイルスやEBウイルス、マイコプラズマ、カンピロバクターに先行感染することで発症します。
ワクチン
インフルエンザや風疹など、ワクチンを摂取した場合にも発症することがあります。
全身性疾患
リンパ腫や全身の悪性腫瘍、全身性エリテマトーデスなどが原因になることもあります。
薬剤
薬剤の副作用で発症することもあります。
ギランバレー症候群を発症したかたの約6割がなんらかの感染症後に発症しています。そのなかでもカンピロバクターは全体の2〜3割を占め、非常に頻度が高いです。
前駆症状は?
まず、ギランバレー症候群の前駆症状が現れます。前駆症状は
- 咽頭発赤
- 扁桃炎
- 急性結膜炎
- 急性胃腸炎
これらの感冒症状が見られたあと、1〜3週間ほどで急に四肢に力が入らなくなるといった症状が現れます。主な症状としては、
- 下肢から体幹部の、左右対称性の筋力低下
- 下肢から体幹部の、左右対称性の麻痺
- 軽度の感覚障害
- 呼吸系の麻痺による呼吸不全
- 両側性の顔面神経麻痺
- 構音障害や嚥下障害
末梢神経が障害されると筋力低下や麻痺などの運動神経の障害が起こります。また、神経が麻痺しているため、腱反射など身体の反射機能は障害されて作動しなくなります。感覚神経が障害されると感覚麻痺や異常感覚、神経因性疼痛が現れます。その他神経症状としては、
- 腰痛
- 顔面神経麻痺(顔面の筋肉が障害されて麻痺します)
- 外眼筋麻痺(眼を外側に向ける筋肉が障害され、ものが2重にみえることがあります)
- 球麻痺(嚥下や咀嚼などができなくなります)
- 感覚麻痺
- 自律神経障害
- 排尿障害(排尿中枢が障害されて起こります)
- 呼吸不全
治療方法は?
ギランバレー症候群の治療方法には以下のようなものがあります。
免疫グロブリン大量静注療法
免疫反応の主要成分である免疫グロブリンを大量投与することで、免疫の働きを調節します。経静脈性に血液製剤を点滴で投与します。通常5日ほど連続で投与します。全てのギランバレー症候群に適応しており、日本では治療の第一選択となっています。すぐに治療が開始できる迅速性や、透析器など特別な装置がいらないことなどが利点として挙げられます。
血液交換療法
血液を装置を使って交換することで、血中から原因物質を取り除きます。一時的な症状の改善が見込まれます。全てのギランバレー症候群に適応しており、すぐに効果があらわれることが利点です。一方、透析装置がないとできないことや、効果が一時的であるというデメリットもあります。
治療後の回復期には関節の硬化や筋力の低下を防ぐため、リハビリテーションが必須です。身体を適切に動かすことで、身体機能の維持や改善が見込まれます。
まとめ
今回の内容についてまとめます。
・ギランバレー症候群は急性の神経疾患のひとつ
・日本では難病指定されている
・有髄神経の脱髄や、軸索が障害されて起こる
・感染症やワクチンの副作用、全身性疾患・薬剤が原因となる
・症状としては、まず咽頭発赤や扁桃炎、急性結膜炎や急性胃腸炎などの炎症反応が生じる
・感冒症状のあと、1〜3週間ほどで四肢脱力などの症状が起こる
・その他、さまざまな神経の障害が起こる
・中枢神経系が障害されると呼吸など生命維持に必要な機能の障害を生じることもある
・治療としては免疫グロブリン大量静注療法が第一に選択される
・一時的な症状の改善を目的とする場合は透析による血液交換療法が行われる
・回復期にはリハビリテーションが必須
ギランバレー症候群はまだ全てが解明されていない疾患です。そういった意味ではまだ治療の可能性が残されている疾患です。
これからの研究でさまざまなことが分かり、さらに効果的で確実な治療方法が確立されることを期待します。