注意:この記事は医師による監修を受けておりません。ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用ください。

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結核とは?

もはや、結核は過去の病気ではありません。確かに歴史上の人物で、石川啄木、高村光太郎、高村智恵子、竹久夢二、樋口一葉、正岡子規、高杉晋作、陸奥宗光などは結核が原因で亡くなっています。しかし、昔に比べて少なくなったとはいえ、現在でも1年間に2万人以上の患者が発生する感染症です。世界的にも結核にかかる人は多く、エイズ、マラリアと併せて世界の3大感染症といわれるほどです。

結核の約8割が肺で発症し、始めは咳、痰、微熱などの風邪に似た症状ですが、重症化すると、息切れ、血痰(血の混じった痰)、喀血(血を吐くこと)などが症状としてあらわれるようになります。結核菌の増殖が進行すると、肺のリンパ節から全身のリンパ節へと拡大していき、血液にも入り込み、肺以外で感染を拡大することもあります。肺以外の感染場所は、首のリンパ節が多く、骨や関節に及ぶと脊椎カリエスになってしまいます。その他、腎臓、喉頭、腸、腹膜などで起こることもあり、脳を包む髄膜に炎症が起きると結核性髄膜炎になることもあります。

結核の原因

結核の発病者が咳やくしゃみをした時に、飛沫に含まれる結核菌が空気中に飛び散り(排菌)、それが空気中に長時間浮遊している間に、人が吸い込むことによって感染します。いわゆる空気感染(飛沫核感染)です。しかし、結核に感染しても必ず発病するわけではありません。菌を吸い込んだとしても健康であれば、免疫機能によって結核菌を抑え込み、体外へ排出してしまいます。

菌が体内に残っていても、免疫細胞(マクロファージ)が結核菌を囲い込んで核を作り(結核の名前の由来)、体内に封じ込められたまま発病しません。このように菌が封じ込められて活動しない状態を感染といいます。感染だけなら、周囲の人に感染させる心配はありません。

感染したからといって、全ての人が発病するとは限りませんが、体力が低下したり、他の病気にかかって免疫機能が低下すると、抑え込まれていた結核菌が再び活動をはじめ、発病する可能性が出てきます。乳幼児は免疫力の弱く、感染すると発病しやすいので注意が必要です。ストレス、不規則な生活、喫煙は発病しやすいとされ、要注意です。

結核の症状

結核の初期症状は咳、痰、37度前後の微熱、倦怠感など風邪の症状と似ていますが、2週間以上続き、良くなってもすぐにぶり返すなどを繰り返すのが特徴です。また、食欲の低下、寝汗の症状がでることもあります。ひどくなると、血痰や胸痛などがあらわれ、少し動いただけで息切れがでることがあります。

さらに進行すると喀血するようになり、また、気胸(肺に穴があくこと)の危険性も大きくなります。栄養障害に伴って体重の減少が進み、食べても痩せて衰えます。最近の傾向では、結核患者の約6割が70歳以上の高齢者です。結核がまん延した時代にに感染し、若いうちは発症が抑えられていましたが、免疫力が落ちる高齢になって発症する人が増えたことが原因と考えられます。

また、結核の受診の遅れや診断の遅れが話題にあがります。症状が出てから受診まで2ヶ月以上経つと受診の遅れとされ、医療機関に受診してから診断までに1ヶ月以上かかると診断の遅れとなります。咳が2週間以上続く場合は、いろいろな医療機関を受診するよりも、かかりつけの医師から呼吸器の専門外来を紹介してもらいましょう。

結核の治療法

結核菌の感染は血液検査やツベルクリン反応検査などで診断されますが、発病の診断は胸部X線や喀痰検査で行われます。治療は基本的に投薬です。リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトールなどの抗結核薬を投与し、菌の活動が停止して、他人が感染しなくなることが確認されるまで、約2〜3ヶ月の入院治療が必要です。

その後は外来で通院しながら治療が続けられますので、治療開始から完治まで6ヶ月程度は必要です。大切なのは医師の指示があるまで、処方された薬を服用し続けることです。咳が止まったからといって、勝手な自己診断で薬の服用を不規則にしたり、止めてしまったりすると、薬の効かない耐性結核菌ができてしまいます。耐性結核は、通常の治療より多くの薬を、長期間服用しなければならず、場合によっては、外科的な検討をせざるを得なくなり、入院期間も長くかかってしまいます。

多種類の抗結核薬が処方される理由は、結核菌の中には特定の薬が効かない菌があり、一種類の抗結核薬だけですと、その薬に対する耐性結核菌が増殖してしまいます。そのため、作用の違う抗結核薬を併用して、すべての菌に対処できるように工夫されているのです。

結核の予防法

結核の予防には、予め感染を防ぐ予防接種、感染した人が受ける潜在性結核感染症治療、感染の恐れが大きい接触者健診の3つの方法があります。予防接種ですが、結核菌の毒力を弱めた菌を用いたワクチン(BCG)を接種します。日本では生後1歳になるまでに受けることになっています。

結核に感染していない人にBCGを接種して、結核菌の免疫を作ります。接種を受けると、結核の発病を1/5程度に抑えることができ、効果が10?15年間ほど持続します。乳幼児は結核に感染すると髄膜炎を併発し重症することがありますが、BCG接種はその予防に有効的です。また、結核菌が体内に入り込んでいても、免疫細胞(マクロファージ)に封じ込められている状態を潜在性結核感染症といいますが、他の病気の治療のために免疫を抑える薬が投与される場合、予防的な治療(潜在性結核感染症治療)が必要です。

なお、潜在性結核感染症の診断は乳幼児がツベルクリン反応検査、子供や大人は血液検査で行われます。さらに、結核の発病者がでると、周囲の感染を受けた人や感染源を特定することが重要になります。このための調査や検査を接触者健診といい、重要な結核予防です。発病者の家族、職場、学校、サークルなどに多方面が調査され、血液検査による免疫診断や胸部X線検査で既に発病しているかどうかが調査されます。